稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第69回 岡田 清の超絶縦バラケのセット釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第69回 岡田 清の超絶縦バラケのセット釣り

言うまでもなく、現代セット釣りにおけるバラケのキーワードは「縦バラケ」。抜き系・持たせ系といったアプローチの違いはあれども、バラけた粒子が水中で縦方向(垂直)に落下し、集魚とくわせエサへの誘導という、ふたつの重要な役割を果たさなければならない。こうした特性を持つバラケエサの開発に各メーカーはしのぎを削り、アングラーは磨き抜かれたテクニックでそれを高精度にアジャストしている訳だが、今ここに新たなバラケエサが誕生したことをお伝えしよう。その名はズバリ「サナギパワー」。読んで字のごとく「さなぎ」の集魚力を最大限引き出すと共に、くわせエサへの類稀なる誘導力が加わった、まさにマルキユー史上最強クラスのバラケエサのお目見えだ。そこで今回は発売直前ついにベールを脱いだ新エサ「サナギパワー」のファーストインプレッションを、マルキユーインストラクター岡田 清の実釣を交えてお届けしよう。

「縦バラケ」は誰もが認める現代セット釣りの普遍的法則だ!

取材直前、岡田には新エサを手渡していたものの、十分に使い込むほどの時間は無く、およそこんな感じといった程度の感触だけをもって取材に臨んでもらった訳だが、そんな岡田にまずは新エサの率直な感想を訊ねてみた。

「とても個性が際立ったエサですね。初めてなので特性を知るために単品に水を加えただけのものを作ってみたのですが、とても重くてすごくバラける…。指先でまとめようとしてもまとまらない(苦笑)。でも使いこなせたら間違いなく強力な武器になる。なぜなら現代セット釣り用バラケに無くてはならない重さとバラケ性を兼ね備えているからですが、そのレベルが半端ない(笑)。」

言葉を飾らない彼らしいファーストインプレッションだが、いつもの飄々とした表情でこう言ってのけた。実際記者も同じ単品で仕上げたエサの感触を確かめたが、シャリシャリッというかザラザラッというべきか、なるほどこれは想像以上に個性的なタッチのエサである。しかし岡田が言うように、これこそが現代セット釣りには無くてならない「縦バラケ」を容易に可能にする、正に核心部分というべき特性なのである。岡田はこの超個性的な新エサを、果たしてどのように使いこなしていくのであろうか。

「基本的にはまとまる性質を持つバラケエサとの組み合わせになると思いますが、ポイントはそのブレンド比率ですね。正直言ってまだよく分からないので、まずは基本通り入ってみます。」

そう言うとエサ袋の裏書にある「高活性時」と書かれたブレンドパターンで手際よく仕上げた。そのタッチは僅かにしっとり感のあるボソタッチで、思ったよりもまとまり感はあるが、水中に落とし込むと今までのエサには無いスピードで開き、直下に沈んでいった。

釣り方のリクエストはせず岡田に一任して始めてもらったが、新エサの特性が分かりやすく、またその効果がダイレクトに伝わるであろうとカッツケ釣りを選択。以下のタックルで支度を整えると、仕上げたバラケのタッチが安定するのを待って静かにエサ打ちを開始した。

使用タックル

●サオ
シマノ 普天元「独歩」8尺

●ミチイト
オーナーザイト「白の道糸」0.8号

●ハリス
上=オーナーループ付バリ/ハリス0.5号-8㎝、下=オーナーザイトSABAKIへらハリス0.3号-30~40cm

●ハリ
上=オーナーループ付「バラサ」5号、下=オーナー「サスケ」4号

●ウキ
一志「アスリート」四番
【1.4-1.2mm径テーパーパイプトップ6.5cm/ 5.3mm径二枚合わせ羽根ボディ5.5cm/0.8mm径カーボン足4.5cm/ オモリ負荷量≒0.3g】

●ウキゴム
オーナー 「浮子ベスト」2.0号

●ウキ止め
オーナー 「スーパーストッパー」1.5号

●オモリ
内径0.3mmウレタンチューブ装着板オモリ1点巻き

●ジョイント
オーナー 「Wサルカン(ダルマ型)」24号

岡田流「サナギパワー」使いこなしのポイント其の一:意識しなくても理想の縦バラケが誰にでも簡単に手の内に入る

新エサの最大の特徴は、何といっても他に類を見ない強力な「縦バラケ」性能である。これについては水槽に入れたバラケの開き方を見れば一目瞭然(別途動画参照)だが、さらに特筆すべきはウワズリを起こす要因のひとつである、麩の粒子の舞い上がりが極端に少ないことである。これにより多少ラフに攻めたとしても、また誤ってバラケが早く抜けてしまったとしても、無駄な粒子が滞留することなく直下に沈んでいくので、構築されたタナの安定感は従来品には無い強さを発揮するだろう。そうしたインプレッションは岡田自身も感じているようだ。

「現代セット釣りで難しいのは、コンスタントにアタリを出し続けること。そのためには自分がイメージするレンジに食い気のあるへら鮒を数多く寄せ、そのタナを長時間安定させ続けなければなりません。従来品にも『セット専用バラケ』に代表されるような縦バラケ系の麩材は複数あり、また『粒戦』等のペレットを効果的に使うことで、なんとか理想に近い縦バラケを実現してきました。

実際ある程度テンポ良くエサを打ち込みさえすれば、ポイント周辺にへら鮒を寄せることはできますが、セット釣りで肝心なのはそれからで、いかにくわせエサに口を向けさせるかが難しいのです。基本的にはバラケをどのくらいの量で、どのタイミングで抜くかによって誘導していく訳ですが、これには高度なエサ付けテクニックが必要不可欠です。難しい時合では、傍で見ているだけでは分からないくらいの、極めて微妙な調整を1投毎に加えなければアタリを出せないこともあり、こうした状況下でセットが苦手な人に釣れと言っても、それは酷な話というものでしょう。しかし『サナギパワー』の縦バラケ性能を完全に引き出すことができれば、それほど高度なテクニックがなくても、確実にタナに寄せながらくわせエサに誘導することができそうですね。これは僕のようなサンデーアングラーにとっては大変ありがたいことで、少ない釣行回数のなかでテクニックを磨くにはやはり限界があるので、できるだけ扱いやすく、しかもどんな場面でも大きな効果が得られる可能性があるハイパフォーマンスバラケは、喉から手が出るほど欲しいエサですからね。」

岡田流「サナギパワー」使いこなしのポイント其の二:大小・軽重様々な粒状さなぎが、かつてないくわせエサへの誘導力を実現!

そのネーミングからも分かるとおり、新エサの軸が「さなぎ」にあることは言うまでもない。バラケエサに求められるポテンシャルとして強力な集魚力は無くてはならない必須要件であるが、先の岡田のコメントにある通り、セット釣りの難しいところは単に寄せるだけではなく、その寄せたへら鮒をさらにくわせエサへと導かなければならない点であろう。これができないと、ただウキがフカフカと動くだけで、しっかりとした強い食いアタリを出すことはできない。実際多くのアングラーがこうした点に苦労しながらも、鍛え抜かれたテクニックを駆使して食いアタリを出し続けているのだが、そのテクニックをバラケのポテンシャルが補ってくれるとしたらどうだろう?

「そんなエサがあるなら、ぜひ僕も使ってみたいですね(笑)。でもこの『サナギパワー』であれば実現できる可能性があるかもしれませんね。ところで最近、以前ほどペレットの効果が実感できないと感じたことはありませんか?長い間ペレット系のエサで攻められ続け、ここに来てペレットにもかなり慣れてきたのか、やや反応が鈍くなってきたように感じているのは決して僕だけではないはずです。そんな折り『サナギパワー』が登場しました。今回使って分かりましたが、新エサに含まれる「さなぎ」はただの「さなぎ」ではありませんね。サイズは大小様々で、色味も緑や茶色に濃淡もあってバリエーションに富んでいますし、これは水中映像でなければ分かり難いのですが、それぞれの沈下速度に違いがあるので、オールシーズンどんなシチュエーションであっても確実にへら鮒にアピールでき、自然とくわせエサに誘導できるに違いありません。」

最初ブレンドが合わずに出遅れた岡田であったが、ブレンドがマッチしてからは安定して釣れ始めるまでにそれほど苦労した様子は見えなかった。むしろ何もやらずにバラケのポテンシャルに身を委ねるような流れで組み立てていたようで、完全に釣りが決まるまでに彼がしたことといえば、ハッキリと分かったのはタナの微調整とハリスの長さを僅かに変えただけ。バラケも小分けした基エサに少量の手水を加えただけで、トップ先端1目盛り残しまで入れてやると、かなりの確率で明確なアタリが出ていた。このことからも分かる通り、粒状さなぎを含んだバラケの粒子が確実に直下に抜け落ち、その際変化に富んだ粒子の落下に刺激されたへら鮒がくわせエサに誘導され、コンスタントな食いアタリにつながったのだと推察された。

岡田流「サナギパワー」使いこなしのポイント 其の三:長時間変わらぬタッチがエサ合わせを容易にし、時合の安定化に貢献!

取材当日は朝方秋の気配が漂い涼しく感じられたが、日中陽が射すようになると気温が急上昇。いつもと変わらぬ暑さとなったが、岡田はバラケに極少量の手水と撹拌を加えるだけで、大きくエサをいじることなく淡々と釣り込み続けた。ここでこの日の釣りの流れを振り返ってみよう。まず高活性向きのブレンドパターンで仕上げたバラケでスタートし、1ボウル打ち切った時点で当日のへら鮒とのマッチングに違和感を覚えた岡田は、迷うことなく低活性時向きのブレンドパターンに変更。これにより明らかにへら鮒の反応が強く感じられるようになった時点で下ハリスの長さを数センチ微調整し、さらにウキ下30cm程で始めたカッツケのタナをやや浅めに調整し終えた後は、バラケの調整のみでほぼ完ぺきな釣況を構築していた。

「バラケのブレンドが決まった時点で、ほぼ今日の釣りの方向性が決まりましたね。ナジミ幅が少な過ぎたり、バラケを早く抜き過ぎたりすると表層で騒ぐだけでアタリが出難くなるので、基本的にはややバラケを持たせ気味にしています。イメージとしてはタナに入った直後にバラケが抜けきる感じで、ウキの動きとしては『感嘆』を付けて3目盛り出しとしたエサ落ち目盛りの2目盛りをナジませるとすぐにバラケが抜けてトップが返すように、サイズと圧加減に注意してエサ付けしたところ、ほぼ毎投のように強いアタリが出ているのでとても良い感じです(笑)。

ここまで手を加えずにエサ付けだけでバラケをコントロールでき、しかも安定的にアタリが続いているのは、明らかに新エサのポテンシャルの賜物だと思いますよ。僕たち競技者が釣果を競ううえで苦労するのは、時間の経過と共に変化する時合に加え、同じように見えて確実に変化しているバラケを合わせ続けることなのです。もちろん手を加えればある程度均一なエサを使い続けることは可能ですが、エサ以外にも色々と考えなければならないことが多いトーナメントシーンでは、できる限りバラケについては心配しないに越したことはありません。その点では粒状さなぎ特有のシャリッとしたタッチが長時間持続する『サナギパワー』は経時変化の心配をする必要が無く、他の部分に集中することができるのが嬉しいですね!」

総括

岡田が信条とするフィッシングスタイルは繊細なエサ合わせを繰り返す地味なものではなく、一旦理想とする時合に持ち込めばそれを類稀なる集中力で長時間持続させ、他の追従を許さないパワー系の強さをウリとしている。そんな岡田をして「この新エサ、かなりイイ感じで使えそうですね。」と言わしめた「サナギパワー」の真髄とは…

「さなぎって軽いイメージがあったのですが、この『サナギパワー』に含まれる粒状さなぎは比重があり、しかも色々なタイプのさなぎが絶妙のバランスで配合されているので、使いこなせればかなり強力な武器になると感じました。正直言ってかなり個性的なエサなので、初めて手にしたときは多少の扱い難さを感じましたが、エサ袋の裏書にある管理釣り場向けのふたつのブレンドパターンをそれぞれ試したところ、途中からはかなりイイ感じで釣れましたね。このエサの特性を生かすには各自の手に合うよう比率をアレンジし、まとまるバラケエサとうまく組み合わせることだと思います。これなら僕がイメージする強いセット釣りが出来そうで、本格的なセット釣りシーズンが待ち遠しいですね!」

最後になったが、今回新エサの開発には現代セット釣りに精通したマルキユーインストラクターの面々が関わっており、そのポテンシャルは既に折り紙付きだが、今回の取材において、さらに岡田 清インストラクターのお墨付きもいただき、無限の可能性を秘めた最強バラケが今、力強い一歩を踏み出した。