稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第71回 石井忠相の正統派チョーチンウドンセット釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第71回 石井忠相の正統派チョーチンウドンセット釣り

もはや一年を通して無くてはならない釣り方となったチョーチンウドンセット釣り。近年そのアプローチは細分化され、厳寒期は言うに及ばず、ありとあらゆる場面に適応できる釣り方へと進化を遂げた。こうした背景には大型べら特有の難時合いを攻略しようとするアングラーの飽くなき探求心があることは言うまでもないが、エサメーカーが提供する新エサが大きく寄与している点も見逃すことはできないだろう。いま、巷で話題沸騰中の「サナギパワー」もまたしかり。現代セット釣りを大きく変える可能性を秘めた新エサとして注目されている。そこで前回の萩野孝之の浅ダナウドンセット釣りに続き、今回もまた新エサの開発に深く関わってきたマルキューインストラクター石井忠相のチョーチンウドンセット釣りにおける「サナギパワー」使いこなし術を紹介したい。取材フィールドは大型べらが群泳する茨城県筑西市にある筑波湖。オールシーズンいかなる時合においても動じることなく繰り出されるマルチなアプローチは必見の価値ありだ!

ワンパターンでは釣り込めない現代チョーチンウドンセット釣り。時合いに合わせてマルチに攻略せよ!

近年のへら鮒釣りは、益々その難易度を増している。その要因のひとつは大型べら特有の時合いの変化にあるといわれているが、事実活性の高低や食い気の有無によってウキの動きは大きく変わってしまうため、ワンパターンのアプローチで釣り込むことは不可能だ。最低でも夏バージョン(高活性期用)と冬バージョン(低活性期用)のふたつのアプローチは必須であり、さらにその中間的なアプローチを手の内に入れておかなければ時合いの変化に追従することはできないだろう。

「確かにへら鮒の動きが最も激しいときの夏仕様と、ほとんどその動きを止めてしまうときの冬仕様のアプローチではまったく異なります。ただしそのいずれもがピークに達する期間は短く、実際には両者の中間的な時合いとなる期間が最も長いのが実情です。そしてさらに厄介なのが単に中間的というだけではなく、そのなかでも夏寄りとか冬寄りといった時合いがあり、季節的な分け方だけでなく、一日の内でも両者が入れ替わり立ち替わり変化する難時合に遭遇することも珍しくありません。そうした幅広い時合の変化に対応すべく、私は概ね4つのアプローチに分けて釣りを組み立てています。」

石井の言うチョーチンウドンセット釣りにおける4つのアプローチとは…

①「ホタチョー(小指の先ほどもある太く大きなウドンを付けたチョーチンウドンセット釣り)」に代表される夏場の接近戦の組み立て方で、バラケを持たせた状態でウキを深ナジミさせたままアタらせるアプローチ(トップを一旦沈没させ、シャクリながらアタリを待つ)

②大きめのくわせをメインとして使い、バラケに対して距離を置くへら鮒を、やや持たせ気味のバラケでアタらせるアプローチ(トップのナジミ幅はトップ4~5目盛り程度)

③小さめのくわせをメインとして使い、バラケに対して距離を置くへら鮒を、わずかに持たせたバラケでアタらせるアプローチ(トップのナジミ幅はトップ1~2目盛り程度)

④くわせもハリも極小サイズをメインとして使い、バラケに対してほとんど近づいてこない低活性のへら鮒を、完全な抜きバラケとサソイを駆使してアタらせるアプローチ(ほぼゼロナジミ状態)

これらは時期によって明確に分けられたものではなく、あくまでその日その時のへら鮒の状態に合わせてアジャストするものであり、直近の釣況を元にスタート時のアプローチを決めたうえで、実際のウキの動きを見ながらベストのアプローチを探ることが肝心だという。

ちなみに取材時は②のアプローチでスタートしたが、思っていたよりもへら鮒の動きが鈍く食いアタリが出難かったため③のアプローチに変更。石井自身②のアプローチでいけると踏んでいただけにこの変更は意外だったようで、「一から組み立て直さなければダメですね」と呟いたひと言が印象に残ったのだが、さらに強烈なインパクトを残したのが③のアプローチに切り替えたことによりウキの動きが激変したことだ。それまで単発だったアタリがコンスタントに続くようになっただけでも効果は明らかだったが、さらにヒット率が高いナジミ幅を探り当ててからは筑波湖名物1kgアップの〝ばこべら〟の連続ヒットを決めるなど、スタート時の不調がまるで嘘のような好調に転じたのだ。

「スタート時の読みは外れましたが、早めにアプローチを切り替えたのは正解でした。今回のように秋から冬にかけての時期は時合いが不安定になりがちなので、へら鮒の活性や食い気の良し悪しに合わせた丁寧なアジャスティングが必要だという良い例でしたね。とはいえ、必要以上に神経質になる必要はありません。各自のスタイルの中で基準となるアプローチを3~4パターン構築し、まずは近況等を加味したうえで決まりそうなアプローチを選択し、その後最もへら鮒の反応が良いパターンを焦らずに探れば良いのです。始めのアプローチで決まることもあれば、途中で変えることになるケースも少なくありませんが、このプロセスを端折っては正解に辿り着くことは困難ですので、億劫がらず、にむしろこの過程を楽しむくらいの気持ちで臨むことが肝要でしょう。」

使用タックル

●サオ
かちどき「匠絆」11尺

●ミチイト
オーナーばりザイトSABAKI「白の道糸」0.8号

●ハリス
オーナーばりザイトSABAKI へらハリス 上=0.6号8cm、下=0.4号50cm

●ハリ
上=オーナーばり「バラサ」8号、下=オーナーばり「軽玉鈎」4号

●ウキ
忠相「ネクストアプローチG」No.8
【1.0-0.6mm径テーパーグラスムクトップ16.0cm/二枚合わせ羽根ボディ8.5cm/ 極細カーボン足8.5cm/オモリ負荷量≒1.5g/ エサ落ち目盛りは全11目盛り中6目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
忠相Dual Hold(M)

●オモリ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.5g+ 調整用0.3mm厚板オモリ(内径0.4mmウレタンチューブ装着)

●ジョイント
オーナーばりWサルカン(ダルマ型)24号

石井流 チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の一:釣況に応じて4パターンのアプローチを的確に使い分ける

オールシーズン同じエサ、同じタックル、同じアプローチで釣れるほどへら鮒釣りは甘くはない。当然ながら石井のフィッシングスタイルは緻密で隙のないものだが、少しでも参考になればと悩み多きアングラーのために分かりやすく示してくれたものが、前述の4つのパターンのアプローチだ。基本的には活性が最も高まる時期と低下する時期のアプローチを両極とし、その中間域をさらにふたつに分けた組み立て方を柱としている。それぞれ基本とするタックル・エサ使いは異なるが、その詳細を別表にまとめたので参考にしていただきたい。いついかなる時でも安定した釣果を得るためには、最低でもこのくらい細かく明確なアプローチの違いが必要であり、この柱を基に状況に応じた細かなアレンジを加えながら、時合いに適したアジャスティングを煮詰めて行くことが求められるのだ。

それぞれ基本とするバラケには「サナギパワー」が核としてブレンドされているが、石井は新エサのポテンシャルは組み合わせる素材によって如何様にも引き出すことができると断言する。

「いたずらにブレンドする素材を増やすことはお勧めできませんが、現代チョーチンウドンセット釣りに必要不可欠な要素をすべて満たしている『サナギパワー』を核に据えることで、バラケ作りの方向性をより鮮明にすることができることは、従来品には無い大きなアドバンテージだと思います。たとえば盛期に実績のある接近戦のバラケとしては、元々チョーチンセット釣り用に開発された『Sレッド』と組み合わせることで、確実にタナまで持たせたうえで強力にバラケさせることが容易になりますし、厳寒期の抜き系のバラケとしては、たとえ早く抜いてもタナまで確実に粒子が降り注ぐ重めの『セット専用バラケ』や、指先の圧加減で自在に抜くタイミングをコントロールできる『セットアップ』を組み合わせることで、より狙い通りのアプローチが可能になるのです。」

釣りが決まり難くなったといわれる現代のへら鮒釣りにおいて、常にトップクラスの釣果を叩き出す石井の釣りにはこうした工夫や計算がなされており、これらをブレさせることなく強い気持ちでやり通すことが大切であることを理解しなければなるまい。

石井流 チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の二:急がば回れ 次のステップに進む前の確認作業を怠るなかれ!

強い気持ちでやり通すということを〝意固地〟とか〝頑固〟と誤解してはいけない。なぜなら石井自身、常に柔軟な発想と姿勢で臨んでおり、正解に向かって一直線に進もうとは考えてはいないからである。取材時もそうであったように相手が生き物である以上、人知の及ばぬ事態に見舞われることも少なくないへら鮒釣りでは、思い込みによる頑固さは決してプラスには働かず、むしろ足かせとなって良い方向へ向かうことを阻害しかねない。場合によっては無駄と思われる行為も決していとわず、たとえ遠回りであったとしても確認作業を一つひとつこなしていくことで、絶対的な自信の元に強い気持ちで臨めるのだ。

「へら鮒釣りの正解へ辿り着く道のりは、必ずしもひとつではありません。基本的には消去法によって絞り込んで行きますが、経験値や勘に頼ったアジャスティングにはいささかリスクが伴います。 〝急がば回れ〟という諺にもあるように、たとえ無駄と分かっていても一つひとつ確認作業を行うことで不安材料を取り除けば、やがて正解への道のりがハッキリと見えて来るものなのです。やるべきことを怠ったり不確かな可能性を引きずったまま釣り進むと、必ず途中で迷いが生じてしまいます。すると肝心なところで決断できないばかりか、やがて迷路に迷い込んでしまい正解に辿り着くことはできないでしょう。たとえ面倒でもこまめにハリスの長さを変えてみたり、ハリやくわせエサを交換してみたり。また大胆に竿の長さを変えたりウキを交換したりすることは、たとえすぐには答えが出なくても、やったことに対する結果は経験(引き出し)になりますし、長い釣り人生にとって決して無駄にはならないはずですから。」

このアドバイスを裏付けるように、取材時の石井は一つひとつ確かめながら着実に前に進み、やがてベストのウキの動きを出して見せた。その間、傍目には無駄とも思える行為もあったが、それも含めて判断した結果が当日の正解に辿り着くための道標になっていた証であろう。特に時合いの変化が激しい昨今、こうしたプロセスは極めて重要であり、是非多くのアングラーに実践していただきたい良き手本であると言えよう。

石井流 チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の三:〝ザ・フィンガーマジック〟 ナジミ幅を自在にコントロールするエサ付けの妙

4パターンのアプローチの使い分けに始まり、消去法によるアジャスティングの確認作業を経て正解に辿り着いた石井。しかし連続して絞る彼の釣りを見ていて気がつくことは、釣れ始めてからの安定感が突出している点である。通常釣れ始めてもへら鮒の寄りが増減したり、食い気が変化すると途端にウキの動きが悪くなってしまう。ところが石井のウキは多少バラつくことはあってもほぼ一定のナジミ幅をキープし、またそのナジミ幅が出たときは決まってアタリが出て釣れ続いたのだ。一体何がこうした安定感を生み出しているのかと、その要因を探るべくつぶさに観察していたところこれだと確信したのが、ウキのナジミ幅を自在にコントロールしていたエサ付けである。

明らかなエサ付けの大きさや形状の違いであれば一目瞭然なのだが、釣れ続いているときほど見た目の違いはなく、最後に親指が押さえるハリのチモトの圧加減と回数にポイントがあると感じたのだ。実際映像で見てもその違いは分かり難いと思われるが、食いが渋いときほどアタリを出すためのキモになることが多いと石井は言う。

「絶対にハリから抜けないエサ付けと、タナまでどのくらいの量をハリに残してナジませるのか、そしてそれをどのくらいのタイミングでハリから抜くのかといったエサ付けテクニックは確かに容易ではないかもしれません。しかしこれから寒くなるに従いへら鮒の活性が徐々に低下するなか、これを意識してやるのとやらないのとでは大きな差が生じてしまいます。また実際エサをハリに付けるという行為だけではコントロールしきれないので、その部分についてはバラケのブレンドによってサポートするようにしています。たとえばちょい持たせのアプローチでは『段底』を加えますし、ちょい掛けのアプローチでは『軽麩』を加えることで待たせ加減に差がつくようにしているのです。」

何気なくブレンドする品種を選んでいるアングラーにとっては目からウロコの金言であるが、それぞれのエサの特性を理解できればこうした使い分けが可能になり、必ずや釣果アップの手助けとなるだろう。ただし使用するタックルやエサ付け時の癖や加減によって、アングラー毎のベストのブレンドは変わる可能性があるので、あくまで「サナギパワー」をベースとしたうえで、イメージ通りにナジミ幅がコントロールできるブレンドを探り当てていただきたい。

石井流 チョーチンウドンセット釣りのキモ 其の四:粒状さなぎによる沈下速度のタイムラグでヒットチャンスを広げる

今さら言うまでもないが、今シーズンの石井のセット釣りのバラケの主役は「サナギパワー」だ。その類稀なる優れた特性は周知の通りだが、なかでも石井が注目しているのは大量に含まれている粒状に加工された〝さなぎ〟である。よく見るとそれは大小様々なサイズに加工され色も異なっている。これだけでも個々の粒子の沈下速度は異なるのだが、さらに粒状ペレットの「粒戦」や「粒戦細粒」をブレンドすることで粒子の沈下速度に複雑なタイムラグが生じ、これにより時々刻々変化するへら鮒の食い気に影響され難い誘引力を発揮するという。

「へら鮒は厄介な魚で、どんなによく釣れたエサでも慣れてしまうと徐々に反応が鈍くなってしまいます。以前は『粒戦』一辺倒のエサ使いでも容易にくわせエサへと誘導できたのですが、近年は余程うまく使いこなさないと、食い気に変化が生じたへら鮒に興味を持たせることが困難になったように感じます。『サナギパワー』に含まれる粒状の〝さなぎ〟はそんな不具合を払拭してくれるので、難しいエサ合わせやエサ付けテクニックを駆使しなくてもヒットチャンスが増えることは確実で、取り分けこれから迎える冬の釣りにおいては、その効果が大いに期待できますね。」

総括

おそらくチョーチンウドンセット釣りは、ここ数年で最も大きな変化を遂げた釣り方であろう。最近の〝ホタチョー〟に代表されるように、個性的な釣り方を次々と派生させ話題となったが、やはり王道とも言うべき釣り方は、今回紹介したような時合いに合わせたアプローチに違いない。もちろん石井自身そうした亜流ともいうべき釣り方を自らかみ砕き、理解したうえで決して負けることのない正統派の釣り方へと自らの釣りをブラッシュアップさせているので、誰に遠慮することなく正々堂々胸を張って時代の先端を行く王道釣法といえるのだ。

「へら鮒釣りは年々変わります。我々アングラーはその変化に柔軟に対応できないと、あっという間に時代に取り残されてしまいます。そんな難しさのあるへら鮒釣りですが、この秋発売された新エサ『サナギパワー』は、近年感じていたへら鮒とアングラーのギャップを埋めることができる優れたポテンシャルを秘めたエサであると確信しています。今回はこれからの季節にやる機会が増えるチョーチンウドンセット釣りでのポイントを紹介させていただきましたが、この新エサの開発に関わった担当者のひとりとして、厳寒期においても大きな戦力となることは間違いないと断言します。オールシーズン様々な釣況において有効な『サナギパワー』を、是非お気に入りの一品にして頂きたいと思います。」