稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第73回 内島康之のバラグルセットの底釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第73回 内島康之のバラグルセットの底釣り

寒さがピークに達する厳寒期。管理釣り場でさえウキの動きは停滞し、アタリはおろかサワリを出すことすら困難な時合が続くなか、思いのほかウキが動く釣り場がある。それは新べらの放流量が豊富な準山上湖。なかでも網中の釣りはこの時期ならではの風物詩であり、混雑する管理釣り場を逃れ、ひとり静かにウキの動きを楽しむアングラーも少なくない。ここでの釣りの特徴は、管理釣り場では規定を超えてしまう長竿を駆使した深宙、もしくは底釣りであり、ターゲットはもちろん仕切り網の中に放流された新べら達。そんな自然のなかでの大らかな釣りをこよなく愛するのがマルキユーインストラクター内島康之。ホームグランドは自宅から近い準山上湖と言って憚らない彼が、グルテンのポテンシャルを余すことなく引き出す技を駆使し、冬の野釣りの定番「バラグルセットの底釣り」でズバリ明快に新べらを攻略する。

この時期野釣りの醍醐味を味わうなら、バラグルセットの底釣りは外せない!

冬場になるとウドン系固形物を使った管理釣り場でのセット釣りを取り上げるメディアが多くなる。もちろん当コーナーも例外ではないが、全国的にみればオールシーズングルテンが主役となる野釣り場が数多く存在する。それはへら鮒釣りのメッカともいえる関東であっても例外ではなく、とりわけ放流量の多い準山上湖ではグルテンを制するものが釣り場を制すると言っても決して過言ではないだろう。

「なぜだか分かりませんが、確かに野釣り場のへら鮒はグルテンが好きですね。近年ウドン系固形物でのセット釣りでも釣れるようになりましたが、それでもグルテンの強さは際立っています。特に新べらが放流されてから以降は徐々にへら鮒のタナも下がり、真冬の厳寒期ともなると6m以上。場合によっては8~9mといった超深場を27尺以上の長ザオで攻めないと釣果が得られないこともありますが、そうした釣り方も私自身嫌いではありませんし、そんなときこそ強さを発揮するのがグルテンなのです。」

今回取材フィールドに選んだ円良田湖(埼玉県大里郡寄居町)では冬季にワンドの入口を網で仕切り、その中に活発にエサを追う新べらを大量に放流している。取材時点では放流から1ヶ月半以上が過ぎており、放流直後の新べらの荒食いは期待できなかったが、取材としてはむしろ好都合で、内島がどのようなテクニックで食い渋るへら鮒に口を使わせるのかが興味の的となった。釣り場を見渡すと先釣者はワンド内に設置された桟橋の2本目3本目に集中しており、その多くが長ザオでの底釣りか深宙釣りで既にエサ打ちを始めていた。それを見た内島はまだ誰も居ない4本目(最奥)の桟橋のさらに奥に進み、25尺一杯で底が取れるポイントに釣り座を構え、まずはバラケとくわせ(グルテン)でのバランスの底釣りで様子をみると言って支度を始めた。ではまずそのタックルとエサ使いから紹介しよう。

使用タックル

●サオ
シマノ 飛天弓「閃光R」25尺

●ミチイト
オーナーザイト「白の道糸」0.8号

●ハリス
オーナーザイト「サバキ」へらハリス 上0.4号-50cm、下0.4号-58cm

●ハリ
上下=オーナーばり「バラサ」4号

●ウキ
旭舟「技」八番
【1.6~1.2mm径テーパーパイプトップ17.0cm/ 6.0mm径一本取り羽根ボディ16.0cm/ 1.2mm径カーボン足5.0cm/オモリ負荷量≒2.2g/ エサ落ち目盛りは両バリが底を離れた状態で全11目盛り中8目盛り出し】

●ウキゴム
忠相 Foot Fit (S)パープル

●ウキ止め
木綿糸

●オモリ
フィッシュリーグ絡み止めスイッチシンカー0.8g+ 厚さ0.3mm板オモリ

●ジョイント
ヨリモドシ

タックルセッティングのポイント

サオ
取材時点ではまだ新べらが深場に落ちきっておらず、5m前後の比較的浅いポイントでも釣れてはいたのだが、年が明けた1月以降は間違いなく深場に落ち着くことを想定して、25尺一杯で底が取れる場所を選んだ。今後はさらにミオ筋に近い超深場が狙い目になるものと予想される。なお超長竿の操作はそれなりに難しいが、底付近を狙うのは新べらを含めて少しでも食い気のあるへら鮒をターゲットとするためであり、それには多少の練習は必要であろう。

ミチイト
厳寒期の小さなアタリをウキに伝えやすくするために、細めのラインを使うことは必須条件。これに伴い水深に対して浮力の小さなウキを使うため、その動きを妨げないものを選ぶことも肝心だという。なお自然の釣り場なので、風による流れに対する耐性を高めるセッティングも忘れてはならない重要ポイントである。

ハリス
今回は両バリ共に底に着けるバランスの底釣りで狙った訳だが、基本的にはバラケ・くわせのいずれを食っても構わないので、上下のハリスの太さを変えることはない。また長さに関してはやや長めなのが特徴であるが、これは上から追わせて食わせることが目的ではなく、あらかじめ食い渋ることを想定し、より広範囲のへら鮒にエサをアピールすることが狙いである。ちなみにタナのセッティングは上バリトントンから約3cmズラシが基本のタナとなる。

ハリ
基本的には上バリにバラケ、下バリにグルテンのセット釣りであるが、こうしたアプローチでは状況に応じて両グルテンにも切り替えることも想定されるという。このため上下のタイプ・サイズは基本的に同じものとするのがベターだ。

ウキ
使用した旭舟「技」は底釣りに適したオールラウンドタイプ。特にバランスの底釣りでは生命線となる〝ウキの戻り〟が良いのが特徴で、底の状態が不安定な野釣り場であっても小さな食いアタリを的確にトップに表現できるのが強みである。

内島康之流「バラグルセットの底釣り」における攻略のポイント 其の一:野釣りの底釣りの極意は、正確なタナ取りと臨機応変なタナ合わせ

タナ取りに始まる一連のタナ合わせは必須要項であり、底釣りの最重要課題のひとつである。一般的に箱(釣り堀)や管理の底釣りでは繊細なタナ取りが要求されるが、底が平坦ではない野釣りではそれほど重要視されていないような気がする。実際にタナ取りゴムを使わずにエサでタナ取りを行うアングラーも居るくらいなのだが、内島は釣り座が決まると管理釣り場でタナ取りを行うようにウキにフロートを付け、やや大きめのタナ取りゴムで丁寧に水深を計測し始めた。それは基本通りにエサ打ちポイント(ウキが立つ位置)の前後左右を丹念に探るやり方で、小刻みに竿先を移動させて計測するトップ先端の目盛りの出方を見る限り、右と手前に緩やかに深くなる傾斜があることと、場所によって若干の凹凸があることが傍目にも分かった。

「野釣りとは言っても、いい加減なタナ取りでは決して好釣果は望めません。ただし1cmの誤差もなく正確に計ることを良しとするのではなく、まずは確実に上下ふたつのハリ(エサ)が底に着くタナで始めることが肝心であり、それを基準としてアタリが出やすくヒット率の高いタナに合わせて行くことが大切なのです。ましてや25尺一杯の底釣りですから、どんなに時間をかけたとしても、ある程度の誤差が出るのは仕方がないことでしょう。従って初めのタナ取りはあくまで目安であって、スタート時点で上バリトントンから3cmズラシ(これが内島の基準ダナとなる)に設定し、空バリで打ってみてハリを底に着けない状態で決めたエサ落ち目盛り(トップ8目盛り出し)よりも半目盛りから1目盛り多く水面上にトップが出ることが確認できれば、それでまずは第一段階クリアーということになり、安心してエサ打ちを始めることができるのです。」

打ち始めのタナについては様々な考え方があるだろうが、この時点の3cmズラシは内島にとって上下ふたつのエサの確実な着底を担保するものであり、その日のへら鮒の動きやコンディションを見るのにも都合の良いタナであるらしい。さらに内島はこう付け加えた。

「正しい(釣れる)タナはへら鮒が決めてくれます。どんなに正確なタナ取りができたとしても、アタリが出なければ話になりません。重要なことはその日そのときのへら鮒にとって食いやすいエサの着底状態を整えてやることであり、まずはエサが底から離れていない状態を作り上げたうえで、ウキの動きを見ながら微調整を加えて行くのが底釣りの基本なのです。」

内島康之流「バラグルセットの底釣り」における攻略のポイント 其の二:底の良し悪しは釣果を決める重要ファクター。釣りながら良い底を探り当てろ!

さらに内島はタナ合わせと同時にエサ打ちを繰り返しながら、アタリが出やすいポイントを探るという、野釣りならではのテクニックを披露してくれた。南東に面した釣り座では、スタート直後は朝日が正面に位置していたため、止むを得ずトップが見やすい位置にウキを立たせなければならなかったが、やがて日が高くなるとエサ打ちポイントを意図的にズラし、内島が理想とする2~3目盛りのナジミ幅が出て、しかもサワリと同時にトップが返した直後に小さなアタリが出るというパターンが続く場所を探り当てたのである。

「正面よりもやや右手にウキを立たせた方がアタリはよく出ますね。おそらくココは底の状態が良く、へら鮒にとってエサが食いやすい場所なのでしょう。こうしたことは野釣りではよくあることですので、たとえタナ取りを行った位置からは外れていたとしても、あらかじめ数十cm四方の底の水深の違いは把握していますので、よりアタリが多く出て釣れる場所が分かったのであれば、それに従うのが得策ですね。」

確かなセオリーと臨機応変な対応。これこそが野釣りに必要な心構えであり、是非見習いたいところである。

内島康之流「バラグルセットの底釣り」における攻略のポイント 其の三:ブレンド相手の良さを100%引き出す「凄グル」活用術

発売から4年が経過。その扱いやすさから、今やグルテンエサの中核を担う「凄グル」だが、内島もまた自身のグルテンパターンの中心軸として位置づけ、野釣り場・管理釣り場を問わずに愛用している。改めて言うまでもないが、素材にこだわり扱いやすさにこだわって開発された「凄グル」はクセがなく、ブレンド性の良さに加えて独特のムチッとしたタッチや経時変化の少なさは、他に類を見ない新感覚のグルテンエサとして多くの支持を得ている。

「私も『凄グル』のポテンシャルの高さに全幅の信頼を寄せているアングラーのひとりですが、単品では個性が強いエサでも『凄グル』と組み合わせることでマイルド感を増し、扱いやすさが格段にアップする点が気に入っています。特に仕上がりのムッチリしたタッチはエサ付けしやすく、強く揉み込まなくても7m以上の深場までしっかり持ちこたえ、それでいて素早く開く(膨らむ)ので、自然と早いアタリが出やすくなります。今回は途中でへら鮒の動きに大きな変化が見られたのでブレンド自体を変えましたが、変更後すぐにしっかりナジんで強くアタるようになったことで釣りやすさが増したことは、この『凄グル』がブレンド相手の良さを余すことなく引き出した証ではないかと思います。」

ブレンドのコツはあれこれとたくさん混ぜるのではなく、核となるエサを軸として必要最小限に止めることで、その効果や扱いやすさを実感することができる。今回の内島のグルテン使いが正にその良い事例であり、「凄グル」が主役のようで、実はバイプレーヤーとして「わたグル」や「グルテンα21」の個性を100%引き出しているという、シンプルで効果の大きな見事なエサ使いであった。

内島康之流「バラグルセットの底釣り」における攻略のポイント 其の四:エサ使いで変わるアタリの取り方

これは一般アングラーからよく質問されることだが、底釣りでバラグルと両グルはどのように使い分けたら良いかという点について、計らずも今回の実釣で明確な答えを示してもらったような気がする。この日予定通りにバラグルセットで始めた内島は、まずはコンスタントにウキが動き、自らが理想とするアタリで釣れることを目指した。食い気のある新べらがポイント周辺に居着いていれば比較的容易に達成できる目標だと思っていたが、桟橋にビッシリと霜が降りるほど冷え込んだうえにやや強めの季節風が吹き荒れるなかでは、なかなか思うような釣りをさせてはもらえなかった。しかし午前10時を過ぎるあたりから徐々に釣況が上向き、やがて3連チャンを決めたところで両グルテンにスイッチ。その後のウキの動きについて内島から次のような解説があった。

「放流直後であれば初めから両グルテンで始めることもありますが、通常はバラグルセットから入って、今のように連続して釣ってもアタリが途切れないくらいにへら鮒が寄り切ったときに両グルテンに切り替え、バラケによる刺激を抑えつつ、無駄なウキの動きを出さないようにして釣り込むように心掛けています。その際注意すべき点は、少しでもウキの動きが悪くなる兆候が見られたら速やかにバラグルセットに戻し、再度寄せながら釣るアプローチに切り替えることです。さらにバラグルセットと両グルテンではアタリの出方にも違いがあるので、そうした点にも注意してください。まずバラグルセットでは比較的ナジミ幅が大きく出ますので、へら鮒のアオリでウキが戻した直後に出る1目盛りほどの小さくてもキレのある鋭いアタリを狙います。一方両グルテンはエサが軽い分ウキのナジミ幅は少なくなり、アオリによる明確な戻しも出難くなります。そして肝心の食いアタリも『ムズッ』とか、『モヤッ』とかいった感じの小さく押さえたり戻したりする動きで食うことが多くなります。こうした違いがあるにも関わらず、エサ使いが変わっても同じようなアタリに手を出していてはスレや空振りばかりが目立ってしまいますから、くれぐれも注意が必要ですね。」

こうした点に気づかずに見ていた記者も、ナゼあのアタリにアワせないのだろうとか、ナゼあんな小さなアタリで釣れ続くのだろうかと疑問に感じていたのだが、読者諸兄もこの内島の解説によって疑問が払拭されたのではないだろうか。

総括

野釣りであれ管理釣り場の釣りであれ、へら鮒釣りの基本は変わらないが、それぞれに固有ともいえる特徴がある釣り方があることも確かなことであり、バラグルセットの底釣りなどはその典型ともいえる釣り方のひとつであろう。管理釣り場並みに魚影密度が濃くなった一方で、多くのアングラーに攻められ続けた結果、野釣り場といえども円良田湖に代表される準山上湖でも、近年管理釣り場と同様のウドン系固形物をくわせにしたセット釣りで、かなりの好釣果が出るようになっている。その傾向は盛期ほど顕著に表れ、夏場の例会・大会ではタナ数十cmのカッツケウドンセット釣りで優勝者が出るほど、野釣りと管理の差が無くなりつつあることも確かなようだ。しかし、時期によっては昔通りのグルテンを主体とした釣り方の方が良いこともあり、常に満足いく釣果を望むのであれば季節や釣り場を選ばない、ヘラフィッシャーマンとしてよりハイレベルな技術が求められている。

「へら鮒釣りは季節や釣り場によって異なる顔を見せることがありますが、その違いを楽しむのもへら鮒釣りの醍醐味ですね。確かにウドンでなければアタリが出ないとか、グルテンでなければ食ってくれないといった極端な現象が見られることもありますが、そうした特殊な事情に振り回されるのではなく、多くのシーンでそうであるように、四季折々に変化するへら鮒の動きに合わせて、無理せず釣り方を合わせることが大切ではないでしょうか。私は管理釣り場でも秋から冬、そして春までグルテンを使うことがありますが、グルテンの釣りには両ダンゴや他のセット釣りでは味わえない面白さがあり、その日そのときのへら鮒がグルテンを求めているのであれば、素直にそれに従って釣りを楽しんでいます。季節的には現在野釣り場の方がグルテンへの反応が良い時期ですので、読者の皆さんには積極的に魚影密度の濃い準山上湖にも足を延ばしていただき、『凄グル』の真価を是非体感して欲しいですね。」