へら鮒天国TOP > 特集・記事一覧 > 稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第74回 保科健二の抜きバラケの沖宙バラグルセット釣り
稲村順一が徹底レポート 釣技最前線
抜いて、仕分けて、追わせて仕留める バラグルセットの新戦略「保科健二の抜きバラケの沖宙バラグルセット釣り」

 全国的にみればポピュラーな釣り方である沖宙バラグルセット釣り。かつて規定一杯の長竿を駆使し、沖に潜む大型の新べらを一網打尽にしたパワー溢れる釣りの威力は、今なお鮮明に記者の脳裏に刻み込まれて消えることはないが、現在の管理釣り場ではとんと見かけなくなってしまった。果たしてあの魅力的な釣りは、今はもう過去のものなのであろうか?

 そんな記者の憂いを払拭してくれたのが、今回紹介するマルキユーフィールドテスター保科健二の沖宙バラグルセット釣りだ。その釣りの最大の特徴はエアーをたっぷり含んだヤワボソバラケを早抜きするという、近代セット釣りの要素を取り入れた斬新なアプローチに如実に表れている。意図的に旧べらと良型新べらのタナを分け、さらにアタリをナジミ際に絞り込むことによって、あたかもコンディションの良いへら鮒ばかりを選別して狙い撃つかの如く釣り込むスタイルは、バラグルセット釣りの新たな可能性を示唆するものであった。

「良いへら鮒を狙って釣れるのは今。だからこそ積極的に獲りにいく!」

 今回取り上げた沖宙バラグルセット釣りは、決して真新しい釣り方ではない。グルテンエサが誕生して以来、冬場を中心としながらも一年中どこでも通用する万能的な釣り方であり、TPOを選ばぬオールラウンド性能という意味では、最も優れた釣法といえるのではないだろうか。しかもこの釣りはある時期に特定の条件が揃えば、良型のへら鮒がたくさん釣れる釣り方としても知られている。

「へら鮒釣りには様々な楽しみ方がありますが、たとえ数を求められる競技の釣りであっても、私は型を揃える釣り方が好きですね。良い型のへら鮒を釣ることは勝負に勝つためのひとつの手段でもありますが、勝負を度外視した釣りであればなおさらのこと、引きの強いコンディションの良い大型のへら鮒を、長竿を駆使して釣り上げるのはスリリングで面白いじゃないですか。ただしそうしたへら鮒はいつでもどこでも釣れる訳ではなく、旧べらの動きが停滞する晩秋から翌春先にかけてがベストシーズンであり、そうした点では今がまさに『旬』の釣り方といえるでしょう。しかもこの釣り方は大型を狙って釣れるのが面白いところでもあり、100%絶対に釣れるとは限りませんが、条件が揃ったときには迷わず獲りにいきますね(笑)。」

 例会や大会の上位の常連でもある保科だが、彼のフィッシングスタイルは決してキレッ切れの尖った釣りではなく、むしろそうしたところを一切表には見せず、どちらかといえば豪快に映る釣りの裏側で骨太のロジカルな理詰めの釣りが展開されている。故に大きくコケることなく常に安定した釣果を残しつつも、狙い通りの釣りが決まったときの爆発力には凄まじいものがあり、彼自身そうした経験を積み重ねることで、こうした強い釣りの魅力にハマっていったのではないだろうか。

さくら湖

使用タックル

タックルセッティングのポイント

サオ

 ターゲットが潜むエリアに届くことが絶対条件なので、必然的に釣り場規定最長尺を振ることが多いが、釣り場のクセや状態を熟知している場合はこの限りではないという。ちなみに取材フィールドとなったさくら湖は保科自身慣れていない釣り場といいながらも、過去の経験と直前に仕入れた情報により迷わず21尺を継ぎ、狙い通りに良型新べらをヒットさせてみせた。

ミチイト

 長竿・浅ダナ・沖打ち・良型狙いという、ミチイトにとっては難しいオーダーばかり並べられた釣りを完璧にこなすために必要不可欠なアイテムが、汎用性に優れたサクセス「極み」エクストラ。張りがあるラインなのでアタリの伝達特性に優れているが、大型狙いの釣りだからといって太いラインを使用するとウキの動き(特にナジミ際のサワリ)を阻害してしまう恐れがあるので、今回はこの釣りでの標準仕様と位置付けた0.8号を採用した。

ハリス

 上ハリスの10cmはバラケを狙い通りのところで抜くための最適の長さであり、チョーチンのバラグルセット釣りで長くすることはあっても、このアプローチでは変えることはない。下ハリスの65cmはこの釣りでの基準となる長さ。これはフォール中にグルテンを上から追わせて食わせるために必要な長さであり、バラケを上層で抜くことでナジミ際に食いアタリを出すことができる最適な長さでもある。仮にバラケを持たせてタナでバラケさせるアプローチとすると、自然とへら鮒は遠巻きとなってしまい、さらにハリスを長くしないとコンスタントにアタリを出すことが難しくなり、良型べらを狙い撃ちすることは困難だという。

ハリ

 水に落とすと浮いてしまうほどエアーを含んだヤワボソタッチの大きなバラケ。これを沖め遠くに打ち込み、狙い澄ましたタイミングで抜くためには、上バリとした「バラサ」7号のフォルムとサイズは欠かせないアイテムだという。また下バリの「バラサ」4号もくわせ系グルテンを確実にホールドし、フォール中に違和感を抱かせることなくナジミ際に食わせるのに適したものとなっている。

ウキ

 今回使用した忠相「ネクストアプローチPC」は、本来は短ザオでのチョーチンウドンセット釣りのために開発されたウキである。これを使う狙いについては、もちろん抜きバラケのアプローチをやりやすくするために他ならないが、バラケを持たせる必要があったとしてもそれは僅かな量であり、仮にトップが沈没するほどバラケを持たせなければならない状況になったときには、エサ落ち目盛りをトップの付け根付近にとることで十分に対応可能だという。それよりも保科はこのウキの持つ最大の特性でもある「ナジミ際のサワリを読みやすくする」というところに大きな期待を寄せており、使う意味があると言う。つまりサワリが表れる位置やタイミングから的確にバラケを抜く位置を判断することができ、より自らの意思を反映した攻撃的・能動的な攻めのバラグルセット釣りが可能になるという訳だ。

忠相「ネクストアプローチPC」

基本バラケブレンドパターン
基本バラケブレンドパターン作り方
基本グルテンブレンドパターン
 
 
保科流 沖宙バラグルセット釣りのキモ 其の一:抜きバラケは良いへら鮒を狙い撃つための選別作業

 かつての沖宙バラグルセット釣りは、放流された新べらの中でも選りすぐりの良型にターゲットを絞った釣り方であった。この釣法がスタンダードな釣り方として多くのアングラーに支持されていた頃は、現在の短ザオでのウドンセット釣りもそれほどポピュラーな釣り方として認知されておらず、まず放流直後に両グルテンで中小べらの数釣りを楽しみ、ひと通り口を使って釣れなくなった時点で、沖に居着いた良型の新べらをバラグルセットの宙釣りで狙うというのが一般的であった。この頃の沖宙バラグルセット釣りは、オモリ負荷量の大きなパイプトップウキで大きなバラケをタナにぶら下げ、それを持たせたままジワジワとゆっくりバラケさせながら、下の層に良型を呼び込んでグルテンを食わせるというアプローチであった。当時はまだ管理釣り場のへら鮒もそれほど大型化しておらず、中小べらが主体のなかでこうした攻め方をすることで、ある程度釣り分けが効く状態ができていた。しかし大型化が進んだ現在の管理釣り場ではこうした釣り分けが困難となり、それ以前に短ザオでのウドンセット釣りでも既存の大型べらがたくさん釣れるので、釣果だけを比較してしまうとそれほど大きな差は見られなくなり、強いて長竿を振るアングラーが居なくなってしまったというのが実情だろう。

「確かに型を選んで釣り分けることは難しくなりましたが、それでも良型の新べらを意図的に狙って釣ることはある程度可能です。私が積極的に取り組んでいる抜きバラケの釣りも、現在の状況を踏まえてのアプローチであり、いくつかの条件が整って上手く釣りを決めることができれば、今でも大型揃いのかなり面白い釣りが楽しめますよ。」

 この釣りの仕組みを理解できていないと、バラケを早抜きすることでの「ウワズリ」というデメリットばかりに目が行ってしまい、どうしても良型揃いの釣りに辿り着くというシナリオがイメージできないかも知れない。しかもウドンですらアタリを出すことが容易ではない状況下でグルテンを食わせるというのだから、なおさら理解することは困難であろう。そこでこの点について保科の理論と記者の理解(見解)をまとめると概ね以下のようなシナリオを描くことができる。


●タナでバラケをぶら下げて待っていたのでは良型のタナができず、新旧べらを分けることができない。また仮にできたとしても良型べらは深めのタナに居着いてバラケを遠巻きにする傾向があり、超ロングハリスを使うなどの無理なセッティングが必要となる。

●良型を遠巻きにさせないためには、現在冬場のセット釣りのアプローチとして定着しているゼロナジミの抜きバラケが有効である。ただし「粒戦」などのウワズリを抑制する重めの直下型バラケを使うとウワズリを起こさない反面、中小の旧べらまでタナに入ってきてしまう恐れがあり、結果として釣り分けが困難になってしまう。

●そこで微粒子主体の軽いバラケを使うことで意図的に中小の旧べらのみをウワズらせてしまい、元来ウワズリ難いとされている良型新べらを深めのタナに残したうえで、良型べらが好むとされているグルテンをそのヒットレンジに自然落下させれば興味を惹きつけられるのではないかという発想の転換が生まれる。この新たな仕組みによりハリスが倒れ込むナジミ際でアタらせることができれば、それはフォール中のグルテンを追うことができるだけの活性がある、食い気旺盛な良型べらという図式が構築されるのである。


「エサ打ちポイントではバラケの粒子がゆっくりと沈下しながら、主に縦方向に広範囲に漂っていると想像できます。私のイメージとしては1投前に上層で抜けたバラケが砕け散り、細かな粒子となってゆっくりと沈んでいくものが、次投のグルテンの沈下中にシンクロするといった感じですね。それくらいゆっくりですから、一旦タナの棲み分けが出来上がると時合いが長続きし、良型ばかりが続けてハリ掛かりするようになるのです。ただし釣れ出しが遅いことだけは覚悟しておいてください。短ザオウドンセット釣りが先行しても決して焦らず、むしろその勢いに陰りが見え始めたくらいに釣れ始まると、後半はその立場が一気に逆転します。終わってみれば良型バクバクで、釣果はもちろんのこと、強い引きを味わえての満足な釣行となること間違いありません。」

保科健二流 沖宙バラグルセット釣り 水中イメージ

保科流 沖宙バラグルセット釣りのキモ 其の二:タナ2本(ウキ下約2m)は良型選別のためのボーダーライン

 沖宙バラグルセット釣りが決まるときのタナは、一般的な浅ダナセット釣りに比べて深めになることが多い。この点についての保科の見解は、

「水面直下からタナに届くまでの間にバラケを抜いてしまう、いわゆるゼロナジミの釣りによって良型を選別するためには、スタート時点で攻めるタナをやや深めにとることが肝心です。これは早抜きしたバラケによって意図的にウワズらせた中小べらを留めておくためのスペースであると同時に、良型べらが自らタナを変えることなくストレスフリーでタナに入れる(留まれる)スペースを確保するためでもあるからです。私はそのボーダーラインをタナ2本と考えています。状況によってはこれよりも深くしたり浅くしたりしなければうまく釣れないこともありますが、基準となるタナを持つことでその後の釣りの組み立て方(特にバラケの抜き方)が変わってきますので、決して疎かにできないポイントなのです。」

 取材時タナ2本(ウキ下約2m)でエサ打ちをスタートした保科は、下バリのグルテンがナジむ間のサワリが弱くなり、完全にナジミきった状態からでしかアタリが出なくなった際にウキ1本分くらい(約30cm)タナを深くしてみたのだが、それによって釣れたのは僅かに1枚のみで、さらにウキ1本分深くして状況が好転しないことを確認すると、一旦タナを2本に戻したうえで、それまでよりも早いタイミングでバラケを抜くようにエサ付けを調整。テンポ良く打ち返して行くと徐々にアタリが復活し、やがて1垉蕕領彪真靴戮蕕混じり始めた。このときの保科の解説では水面下1m辺りで抜け落ち、下バリのグルテンがウキの直下に入ったところでもまだバラケの粒子は上層にあるイメージだと言い、ウキの動きとしては立ち上がり直後にトップの付け根で軽いトメが見られ、トップにグルテンの重さが表れ始めてからナジミきるまでの間に1〜2目盛りカチッと入る明確なアタリがコンスタントに続くようになっていた。結果としてこの日はタナ2本が最もウキの動きが良く、狙い通りの良型新べらを複数枚獲ることに成功した訳だが、日並によってはさらに深いタナや浅いタナになることもあるので、ベストのタナの探索はバラケの抜き方と合わせてこまめに探る必要がありそうだ。ちなみに抜き方を僅かに早くしたときのバラケのエサ付けだが、見た目の違いは記者にもほとんど分からず、試しにエサ付け前のバラケを受け取って解してみたのだが、それでもタッチの違いも分からないレベルの繊細な違いであった。唯一分かったことは、保科がエサを振り込む際にバラケが手前に落ちてしまう投が増えたことくらい。これだけでもいかにデリケートでソフトタッチなエサ付けであるかが分かるであろう。

保科健二流 沖宙バラグルセット釣り 基本アタリパターン

保科流 沖宙バラグルセット釣りのキモ 其の三:グルテン好きの良型新べらをナジミ際で仕留める!

 新べらにグルテンが有効なエサであることはいうまでもないが、放流から長い時間が経過した今、また地べら化した大型も含めて春のこの時期に、その威力をさらに増すことを保科は強調する。実際春先の釣行においてウドンの方が明らかにアタリは多く、中小べらであれば難なく釣れるといった状況下であってもあえてグルテンを使うことで、たとえアタリが減ったとしても良型の新べら地べらが釣れるようになったという経験を持つアングラーは決して少なくないはずだ。

「確かにウドンでも釣れるのですが、あえてグルテンを使うことでウドンに反応しやすい旧べらのアタックを避け、良型の新べら、旧べらに狙いを絞り込むことが可能になるのです。ただし、そのためにはグルテンの種類やアタリの取り方にも工夫が必要になります。この釣りでは下バリのグルテンがフォールしている最中に追ってくるコンディションの良いへら鮒がターゲットですので、上層に選別された中小べらに揉まれてもエサ落ちしない『わたグル』のような持ちの良いグルテンが必要不可欠です。しかし食わせようとしているタイミングは早いので、持つだけで開きが遅くなってはアタリが出難くなってしまい、たとえアタったとしてもカラツンになる確率が高くなる恐れもあります。従ってくわせとするグルテンは開きが良く、マッシュの粒子を糸が引くようにフォールしながらも、繊維はハリにしっかりと絡みついて最後まで抜け落ちないものがベストということになります。」

 単にセットの釣りだからという理由だけでくわせ系グルテンの「わたグル」を単品で使ってしまうと、エサ持ちという点では優るかもしれないが、「グルテン四季」をブレンドしたものよりも誘導力や摂餌アピール力の点で劣ってしまい、フォール中にバイトさせることは困難になるだろう。これこそがグルテンブレンドの妙であり、この釣りのシステムにマッチした最高のくわせエサといえよう。

「わたグル」「グルテン四季」

総括

 サイズやクオリティーにこだわらなければ、それなりに数釣りが楽しめる現在の管理釣り場にあって、もしかしたら保科の釣りは異質のように映るかも知れない。しかし釣り方そのものは古典的なスタイルであり、決して真新しい釣り方ではない。ただ確実に言えることは、今回紹介した保科流のアプローチは彼自身長いへらキャリアのなかで幾度となくブラッシュアップが繰り返され、現代版の抜きバラケのエッセンスを加えて構築された、極めて完成度の高い釣り方であるということだ。取材を終えその効果のほどを目の当たりにしたいま、ぜひ彼のアプローチを手本とし、沖に潜む大型のへら鮒を獲ってみたいという衝動を抑えきれない自分が居ることに記者自身驚いている。

「野釣りはともかく、現在の管理釣り場でバラグルセットの宙釣り自体やっている人は少ないですし、ましてや私のようなアプローチで攻めているアングラーはあまり見かけないですね。しかし私の周りではこの釣り方に精通された方も多く、決して特別な釣り方だとは思っていません。もちろん私自身、この釣り方が完成されたものだと思ったことは一度もなく、今なお変化し続けている未完成の釣り方だと考えています。恐らく私とは違ったバラグルセットのアプローチでたくさん釣られているアングラーも居ると思いますし、機会があれば釣り比べてみたいですね。」

保科健二

 いつも謙虚な姿勢を崩さない保科だが、発せられる言葉やフィッシングスタイルからは絶対的ともいえる自信と確信が滲み出ており、それだけに十分な説得力がある。取材の冒頭で彼が言った「たとえ勝負が懸かった釣りであっても、条件が揃えば良いへら鮒を獲りにいきたい」という気持ちは、おそらく多くのアングラーの偽らざる本音であろう。しかもそれが単なる偶然ではなく、理詰めの結果の必然であればやらない手はないはずだ。明らかに大型が好むグルテンを使った沖宙バラグルセット釣りは、今まさに旬を迎えている。釣行の際には是非「わたグル」+「グルテン四季」を携え、大型べらを狙ってみてはいかがであろうか。

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