稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第75回 中澤 岳の両ダンゴの底釣り|へら鮒天国

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稲村順一が徹底レポート「釣技最前線」第75回 中澤 岳の両ダンゴの底釣り

個性的な理論と卓越したテクニックで、独創的な世界観を生み出すマルキユーアドバイザー中澤 岳。巷では手返しの早いカッツケ釣りが得意な元祖トーナメンターという印象が強いが、本人曰く「底釣りも大好きなんだけどな…」と、世間の見方に些か不満のある様子。それならば当コーナーの読者をうならせる底釣りを見せてもらおうではないかと訪れたのは、ひと足早く両ダンゴの底釣りで釣れ始まったという富里乃堰。そこで繰り広げられたのは意外にも中澤らしからぬ?底釣りらしい底釣りワールドであった。

底釣りに勝機があるのは春と秋

「底釣りというとなんだかのんびりしたイメージがあるよね。確かに魚影の薄い野釣り場ではそうした感じの釣りになることが多いけれど、管理釣り場はもちろんのこと、野釣り場でも放流量の多い釣り場であれば宙釣りを凌ぐ釣果を得られることもある。そのチャンスがあるのが春と秋。そう、今がまさにそのときなんだ。春って意外に宙釣りが不安定になることがあるが、底釣りはへら鮒が居着いてさえいればほぼ確実に釣ることができる。それも僕好みの早いアタリで決着がつく両ダンゴでね(笑)。」

自信満々にこう言い放った中澤だが、実は中澤の底釣りを目の当たりにするのは今回が初めての記者。どんな底釣りをみせてくれるのか興味津々で釣り支度が整うのを待っていると、

「普通に釣っちゃって良いんだよね?」

と相変わらずの飄々とした物腰で言うや否や、いつの間にタナ取りを終えたのだろうか、両バリにエサを付けていきなりエサ打ちを始めたではないか。一体タナ取りはどうしたのかと訊ねる記者に中澤は、

「アバウトに計ったけれど大丈夫だよ。とりあえず両バリ共にエサがハリに残っていれば、底に着いていることだけは間違いないね。それはウキのナジミ方を見ていれば分かるんだ。タナ取りゴムを付けてタナを計っているときのように、トンという感じでトップが静止するだろう。これが確実に底に着いている証拠なんだ。底釣りというと、とかくタナ取りの正確性を唱えるアングラーが多いけれど、肝心なのはタナ取りの精度ではなく、良いアタリが出てコンスタントに釣れるタナ合わせなんじゃないかな?僕自身このままのタナで釣れ続くとは思っていないし、このあと調整が必要になることも分かっている。僕が理想としているウキの動きは、ナジんで戻してツンという淀みの無い一連の動きで釣れ続く動き。おそらくタナは一発では決まらないと思うけど、完全に決まったら富里乃堰の水底に潜む良型べらが入れ食いになるはず。もちろん例会や大会でも十分勝機のある釣り方だよ!」

よく見れば、中澤のミチイトにはタナを計った際の基準となる目印である〝トンボ〟が付いていない。

「目印があると、返ってそれにこだわり過ぎてしまい、タナ調整を大胆に行えなくなってしまうから付けないことにしているんだ。」

いかにも中澤らしい発想だが、確かに上級者であればこうした考え方に理解を示すアングラーも少なくないだろう。しかし初中級者に同じことをやれと言われても、さすがにそれは無謀と言わざるを得ない。従ってここでは中澤の真似をするのではなく、着眼点と考え方を理解したうえで〝タナ取り〟よりも〝タナ合わせ〟の方に重きを置くことを念頭に読み進めていただきたい。

使用タックル

●サオ
シマノ 普天元「独歩」12尺

●ミチイト
オーナー「白の道糸」1.0号

●ハリス
オーナーザイトSABAKIへらハリス0.5号 上35cm、下43cm

●ハリ
上下=オーナー「バラサ」6号

●ウキ
俊作 底釣り用中細パイプトップ 十番
【1.4-1.0mm径テーパーパイプトップ13cm/6.2mm径一本取り羽根ボディ10.0cm/1.0mm径カーボン足6.0cm/オモリ負荷量≒1.9g/エサ落ち目盛りは全11目盛り中5目盛り出し】

●ウキゴム
オーナー「浮子ベスト」2.0号

●ウキ止め
オーナー「スーパーストッパー」1.5号S

●オモリ
ウレタンチューブ装着板オモリ1点巻き

●ジョイント
オーナー「Wサルカン(ダルマ型)」24号

タックルセッティングのポイント

サオ
底釣りをするうえで竿の長さはタナ取りの精度、エサ打ちコントロールを左右する重要な要素となるが、そうしたテクニックにおいて間違いなくトップレベルの中澤にとっては何の問題もないことであり、むしろアタリが最も多く出るところにエサを送り届けるために必要な長さを選ぶことの方が重要だと考える。当日はとりあえず14尺から始めたが、徐々にへら鮒のウワズリと春特有ともいえる良型のヘチ回遊を感じ取ると躊躇なく12尺に交換。これによりグッドコンディションの良型のへら鮒の入れ食いを演じて見せたのである。

ミチイト
底釣りでも役立つ高視認性のミチイトを操り、流されるウキの動きだけでは分かり難い水中の流れを考慮したエサ打ちにより、微妙な傾斜となっていたカケアガリを見事に攻略した。また計測精度ではなくナジミ幅を基準としたウキの動きに重きを置く中澤にとって、ミチイトの伸縮によるタナボケが少ないラインであることは大きなアドバンテージになるという。

ハリス
中澤流両ダンゴの底釣りのアタリは至って明確だ。深くナジんですぐに戻してツンと決めるためには、ハリスの張りは重要な要素となる。しかも底にエサを安定させるためには単なる張りではなく、しなやかさを兼ね備えていなければならないと中澤は言う。また長さについては野釣りでは短め、管理釣り場ではやや長めを基本とするというから、今回の長さはやや長めということになるが、近年の底釣りのハリスの長さと比べると必ずしも長いとはいえない長さだ。これはアタリの取り方とも関係するが、底から上のへら鮒も底へと引きずり込む意図はあっても、あくまでエサを食わせるのは地底であり、極めてナチュラルに着底したエサが静止して以降の、最初のアタックで食わせる速攻戦術が中澤流底釣りの根底にあるということだろう。

ハリ
軟らかめのエサを底へと送り込むには、最低限このくらいの大きさは必要だという。実際使っていたエサのタッチはビギナーではエサの振り込み時にハリから抜けてしまいそうな軟らかさだが、大きめのハリを使うことでストレスなくタナまで持たせることができるようになる。

ウキ
中澤にとっての底釣りウキは単なるアタリを取るための道具ではなく、底釣りのキモである戻しを確実なものにしたり、エサ持ちやナジミ幅をコントロールしたりするための重要なアイテムだ。特に戻しに関しては底の状態に関わらず確実に戻すよう、ボディ形状にはストレート部分の多い高浮力タイプを基本とすることにこだわりを持っている。さらに今回中澤はほぼ同じオモリ負荷量でありながら、トップの径の異なるふたつのパイプトップウキを使い分けた。始めは上記のウキでスタートしたが、途中で大きめのエサが良いと判断した際に太めのものと交換し、必要以上にナジミ幅が大きくなることを防いでアタリを持続させ、サオを短くしてからは小エサが効くようになったことから上記のウキに戻して釣りきって見せた。また今回は登場する機会はなかったが、大量のへら鮒が寄ることによってエサ持ちが悪くなったときでもエサには手を加えず、ムクトップウキを使うことでストレスなくエサを底へと送り込むというテクニックもあるとのこと。

中澤流「両ダンゴの底釣り」のキモ 其の一:アタリの出るナジミ幅をウキ下調整と打ち込み精度で探り当てる

先に中澤のタナ取りが、さもいい加減であるかのような印象を与えかねない文言を並べてしまったが、その実態は極めて合理的で実践的なタナ合わせにより、へら鮒が無理なく食いやすい状態を作り上げていることを付け加えておかねばなるまい。その結果、前触れから食いアタリまで明確にその動きをウキに表すことを可能にしている訳だが、中澤の頭の中には何センチズラシが良いとかいった細かなこだわりは無いようで、確実に両バリが底に着く条件である上バリトントンを基準ダナとし、そこから徐々にズラシ幅を多くとる方向でその日そのときのベストのタナを探っていく。底釣りおけるタナの重要性はいうまでもないが、それ故に多くのアングラーはスタート時点で高精度のタナ取りを目指している。おそらく底釣りを覚えたときからそれが底釣りのセオリーであると教え込まれてきたからであろうが、1cmのズレも許されないような厳しさというか、几帳面さを求める風潮ばかりが独り歩きをしているように感じるのは記者だけであろうか。

「初めから正確なタナ取りができれば、それはそれで素晴らしいことだし、僕もそうありたいと思っているが、実戦のフィールドはプールのように底が真っ平で水位の変動もまったく無いというわけではなく、大抵の底は傾斜や凸凹があるし、水位の変動だってあるだろう。なによりどんなに優れたラインであっても多少の伸縮は免れないので、そうした変化に対していちいち気にしていたのでは釣りどころではなくなってしまうだろう。何かがおかしいと思うたびにタナを計り直していたのでは、釣りをしに来たのかタナを計りに来たのか分からなくなってしまうじゃないか(苦笑)。僕が底釣りで大切にしていることは、アタリに至るまでの重要なプロセスである適正なナジミ幅と、へら鮒がこれからエサを食うぞという前触れのサインである戻し。これがイメージどおりに出るタナに合わせることなんだ。」

言葉にしてしまうと簡単なように思えるが、実はこれこそが底釣りの最重要ポイントであると同時に、多くのアングラーを悩ませるところでもある。実際にコンスタントに釣れ始まったときのウキの動きは、中澤の言うとおり1目盛り半残しまで深くナジみ、すぐさまへら鮒のサワリによってウキが戻すと、直後にカチッと音が聞こえるくらい力強くキレのあるアタリが出ていた。もちろんこうなるまでには数回に渡ってウキの位置を調整していたのだが、中澤の入った釣り座の底がカケアガリになっていたこともありウキ下の調整はそこそこに止め、エサを打ち込む際の振り込み精度を上げることにも神経を使っていたように記者の目には映った。たとえば風による流れがないときは普通に打ち込むが、流れが生じたときにはその強弱に合わせてエサの着水位置を流れの上にズラしたり、やや沖めに打ち込んだ後でウキのナジミ際に竿尻を引いてカケアガリの斜面にエサを安定させようとするなど、地味で目立つことはないが極めて重要なテクニックを随所にちりばめながら、アタリの出る理想のナジミ幅を探り当てることに注力していたのだ。

中澤流「両ダンゴの底釣り」のキモ 其の二:中澤 岳も絶賛!底釣り三種の神器は極めて完成度の高いエサ

へらアングラーの間では「底釣り三種の神器」と呼ばれる「ダンゴの底釣り夏」「ダンゴの底釣り冬」「ペレ底」。この3種を同量ずつブレンドして仕上げるダンゴエサは、今やスタンダードともいえる底釣りの定番ブレンドになっているが、個性的なエサ使いを得意とする中澤にしては余りにも普通過ぎるエサ使いなのでは?

「釣れる(食う)エサはアングラーではなくへら鮒が決めるもの。このブレンドは管理・野を問わず大抵の釣り場で通用するので、ある意味底釣りの命綱ともいえる大切なエサなんだ。なぜ3種類もブレンドするのかといえば、それはこの方が釣れるからに他ならない。どれかひとつが欠けても、また余分なものが加わってもイメージどおりのウキの動きにならないんだ。それに調整も至って簡単で、釣り込んでいく過程では手水と押し練り(折り畳むような練り方)で軟らかくする方向で調整し、基エサではどうしても軟らかすぎるときは『ペレ底』をパラパラと振り掛けてさし込むように混ぜれば良いだけ。つまりこれ以上のことは何も必要無いくらい完成度の高いエサだということだね。」

細かなテクニックは真似することができなくても、このエサであれば誰にでも同じようなタッチのエサが作れるはずだ。実際記者も釣り場で作ってみたが、なるほどイイ感じのタッチのエサに仕上がることが分かった。コツはカップで計量する際にすりきりではなく、わずかに山盛り気味に取ること。さらに水を加えてからは素早くたくさん大きくかき混ぜること。これによりしっかりしたコシが出て、エサ付けしやすいまとまり感のあるエサに仕上がるので是非お試しあれ。

中澤流「両ダンゴの底釣り」のキモ 其の三:底釣りは粛々と、それでいてアグレッシブに攻めていけ!

カッツケ釣りに代表されるような、超速攻の釣りが身上の中澤。さぞや底釣りでも早いアタリを狙ってガンガン釣り込んでいくのかと思いきや、意外(?)にもそのスタイルはおとなしく、むしろ意図的に静かに遅くしているのではないかと思うくらいゆったりしたペースで釣り進んで行った。この日の釣りの流れを簡単に振り返ると、まずは様子をみようと穂先1本余しくらいのタナとなる14尺でスタート。開始間もなく良型が釣れ始まったものの次第にカラツンが目立つようになり、エサを軟らかくしてみたりタナを最大10cmズラシくらいまでベタ気味にしてみたが、いずれも決め手になるような効果は見られなかった。それでもヤワネバタッチのエサを大きめにすることでやや好転する兆しが見えたところで、必要以上にナジミ幅が大きくならないように同じオモリ負荷量の太めのパイプトップウキに交換。直後は良い感じになりかけたが、次第に釣れるへら鮒の型が小さくなり始めたのとウワズリの兆候が見え始めたのを機に、無理にタナを押さえ込もうとはしないで、竿を短くすることで手前のカケアガリの斜面を攻めれば、ウワズリ気味のへら鮒とヘチ回遊の良型べらの両方を狙えるのではと考え、12尺でほぼ一杯の底釣りに変更(このときウキも最初のものに交換)した。結果的にはこれが正解で、それまでよりも明らかに型の良いへら鮒が数多く混じるようになり、しかも中澤がイメージする理想的なナジミ幅で連続ヒットさせるシーンが劇的に増えたのだ。こうなれば中澤の独壇場。次々と良型を玉網に収めながらこう言ってこの日の釣りを締め括った。

「底釣りって地味で静かなイメージがあるかもしれないけど、見えないところで意外に色々なことを考えているんだよね。そうしたことを粛々と積み重ねていくと、やがてへら鮒の方がどんどんやる気を出してくるので、あとはアングラーがそれに合わせてアグレッシブに攻めれば良いだけ。特にこの時期の底釣りは昨秋放流された大型の新べらが再び口を使う時期なので、タナ取りばかりに気を取られていないで、是非『夏』『冬』『ペレ底』で両ダンゴの底釣りを楽しんで欲しいね。きっとエキサイティングな底釣りができると思うよ。」

総括

緻密な戦略と大胆な攻め方が混然一体となった中澤 岳の両ダンゴの底釣り。時として奇抜な発想で我々を驚かす釣りをみせる中澤だが、底釣りにおいてはベテランの経験と技術に裏付けられた、太い芯棒が一本通ったような重厚な釣りを披露してくれた。もちろんその骨格を成すのがエサであり、底釣り三種の神器「夏」「冬」「ペレ底」であることはお分かりいただけたであろう。一つひとつを手に取るといずれもかなり個性的なエサなのだが、中澤も言うようにすべてがひとつにまとまったときに、何ものにも代え難いポテンシャルを発揮するエサへと昇華するのである。「春は底を釣れ」の格言にもあるとおり、今まさに本格的なシーズンを迎えた底釣り。ベテランはもちろんのこと、ビギナーでも使いやすい底釣り三種の神器で、思う存分旬の底釣りを味わってみてはいかがであろうか。