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MARUKYU エコレポート
釣り場の水質と釣りエサの関係性

 明日も、来週も、来年も、ずっと釣りがしたい。多くの釣り人がそう思っているのではないでしょうか。一方で釣りは大なり小なり自然環境に負荷をかけてしまうこともあります。そんな負荷をかけないように意識して釣りを楽しみ、釣り場を維持できるようにしていかなくてはなりません。末永く釣りができる環境をつくることも私たち釣りエサメーカーの使命だと考えています。その一環として釣りエサの環境への影響などは常日頃から調査研究を続け、製品づくりに反映させています。
 2020年、新型コロナウイルスが猛威をふるい、通常考えられないようなことが引き起こされています。世界経済が大きく揺らぐ中、釣り業界も例外ではありませんでした。感染拡大防止のため、人気釣り場が休業せざるを得なくなることもありました。そのような状況の中、魚釣り場の水質と釣りエサの関係性を調べてみました。へら鮒の管理釣り場2カ所「つり処 椎の木湖:埼玉県羽生市」「野田幸手園:千葉県野田市」の協力のもと、休業期間中と営業再開後の一定期間で水質測定を行いました。この測定の目的は、休業中(約1カ月間)【釣り人が訪れず釣りエサが使われていない状態】と営業再開後【釣り人が訪れ、釣りエサが使われた状態】の測定値を比較することで釣りエサの水質への影響を確認するためです。また、2010年から継続して水質測定を行っているへら鮒釣り場として有名な埼玉県内の一級河川である「びん沼川」についても結果と合わせて考察しました。測定項目は水温、pH、アンモニウムイオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、硫化物、COD、硝酸イオンで行いました。これらの中でも一般的に水質が悪化すると値が上昇するとされている5項目の測定結果についてお話しします。
 測定地3カ所と測定した5項目の特徴は以下の通りです。

測定地について


つり処 椎の木湖
 農業用のため池の一部を整備して造られたへら鮒管理釣り場です。水源は周囲にある農業用水路からの流入で、流れ出た水もまた用水路へと排出されます。
野田幸手園
 五駄沼という沼を整備したへら鮒管理釣り場です。水源は小さな水路や隣接する小規模な池からの流入水で、江戸川につながる排水機場へと流れ出ていきます。 びん沼川
 成り立ちは荒川の旧河川。河川ではありますが、放水路と調整池の役割もしており、水の循環が非常に緩やかです。野釣りのへら鮒釣り場として有名で、年間に訪れるへら鮒釣り師の数も日本有数の釣り場です。水源は主に農業用水路からの流入で、最下流に排水機場があり、荒川へと流れ出ていきます。

水質測定項目について


アンモニウムイオン(NH4+
 生物の腐敗や分解、排泄物から発生して、数値が高いと魚に悪影響があります。
亜硝酸イオン(NO2-
 アンモニウムイオンから発生して、アンモニウムイオンよりは弱いですが魚に悪影響があります。数値が高いと魚が酸欠を起こしやすくなります。
硝酸イオン(NO3-
 亜硝酸イオンの酸化で発生します。植物の栄養になるため多すぎるとアオコなど植物プランクトンの異常発生につながります。また亜硝酸イオンより生き物への毒性は弱いですが濃度が上がると悪影響があります。
リン酸イオン(PO43-
 主に肥料や土壌からの溶出に由来します。植物の栄養になるので、リン酸イオンが水中に多いとアオコなど植物プランクトンの異常発生につながります。
COD
 化学的酸素要求量。有機物を分解する過程で消費される酸素の量のことで、有機物による水質汚濁の指標になります。数値が高いと汚れていることになり、酸欠を起こすなど魚に悪影響があります。
 では、各釣り場の測定結果を見ていきます。
 まず、埼玉県にあるへら鮒管理釣り場である椎の木湖についてです。
 この釣り場では休業中も営業再開後も測定値の変動は極めて少ない結果となりました。営業を行っている期間と休業している期間で水質の測定値に変化がほとんど見られないことから、釣り人による釣りエサの使用が今回の測定項目において池水に与える影響は極めて少ないと考えられます。
 次に、千葉県にあるへら鮒管理釣り場の野田幸手園についてです。
 休業中と営業再開後の測定値を比較してみると、リン酸イオン、アンモニウムイオン、CODについては休業中と営業中で大きな違いはありませんでした。また、亜硝酸イオンと硝酸イオンの値が営業再開後に上昇していましたが、これは最上流部の流れ込み付近の値が高かったことから流れ込む水によるものである可能性が高いです。実際に、釣りエサが使われている場所での測定値は営業再開後も休業中と同程度の割合で減少していました。この釣り場の水質の特徴として釣り池に流れ込む水のリン酸イオン、アンモニウムイオン、亜硝酸イオン、硝酸イオンの各値が高く出ることがほとんどで、池に流入するとそれらは下流に行くにつれて減少することも分かりました。これらのことから、野田幸手園では釣りを行うことによる釣りエサが水質に与える影響は今回の測定項目においては極めて低いと考えられます。
 最後に2010年から現在まで継続して定期的に水質測定を行っている埼玉県のびん沼川についてです。
 びん沼川は河川ではありますが先述の通り放水路と調整池の役割もしており、水の循環が非常に緩やかです。さらに他の河川に比べると釣り人が非常に多いことが特徴として挙げられます。したがって、釣りエサが水質に影響を及ぼしているとすれば下流に行くにつれて指標となる測定値が上昇すると考えられます。しかし、測定の結果はいずれの項目も最上流部より下流部の値が低くなっていました。このことからびん沼川においても釣り人が投入するエサによって測定値が高くなることはなく、釣りエサが水質に与える影響は極めて少ないと考えられます。

 以上のように3カ所の釣り場において、いずれも釣りエサが釣り場の水質を悪化させているというデータは得られませんでした。つまり、今回水質測定を行った釣り場では、釣り人が使用するエサの量を自然の浄化力が上回っていると考えられます。しかし、この結果が全てではなく場所や年月が経つことによって状況は変わる可能性もあります。私たちマルキユーはこれからも常日頃から釣り場の状況を観察し、より環境負荷の少ない釣りエサの開発を継続してまいります。もちろん、釣り人の皆さまの協力なくして末永く楽しい釣りを続けることはできません。釣り場を守り、その環境を良好に保つためにもゴミの処理や駐車マナーなど、釣りを楽しみながらも気を付けるべきことは気を付けて気持ち良く釣りを楽しみながら、釣りを愛する者として皆で協力し合って釣りを続けられるようにしてまいりましょう。
 楽しい釣りを末永く続けられるようにマルキユーではこれからも水辺の環境調査、釣りエサの研究を続けて、より一層環境に配慮した製品開発を続けてまいります。

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