つれるエサづくり一筋、マルキユー株式会社
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MARUKYU エコレポート
いい釣りをいつまでも

継続は力なり


 自然を相手にする釣りは、狩猟本能を覚醒させたり、冒険心をくすぐったり、癒しをもたらしたりして人間にプラスに働いていますが、多かれ少なかれその自然に負荷をかけていることも事実です。釣りの美しい表現は、かの文豪・開高健氏が文学的な言葉で表し、釣りをしない人たちにも多くの影響を与えました。しかし釣りがもたらす負の影響も素直に認めて解決していかなければなりません。
 その中でマキエによる海への負荷も懸念されていました。釣り人がエサを撒いて海を汚すと環境悪化のターゲットにされていたこともありましたが、それは私たちの調査で間違いであることがわかりました。
 その調査は2005年4月から始まりました。マキエによる海底への影響を観察するため三宅島で海底調査が開始されたのです。学術的な裏付けを得るために東京海洋大学とマルキユーが共同研究をすることになったのです。
 三宅島は2000年6月の火山噴火により、全島民が避難し、解除になるまで4年5カ月、誰も釣りをしていませんでした。2005年に渡航解禁になり釣り人が押し寄せる直前の4月下旬、三宅島へと渡航しました。最初の頃はガスマスクを携行しないと入島できないという緊張感がありましたが、今ではマスク不要です。
 4年間マキエが撒かれていない状態から、釣り人が渡航開始して撒き始め、海がどのように変わっていくのかを調べています。
 「マキエは海底に堆積しない」ことを実験、証明するためにまっさらな状態から調査を始め、釣り人のエサやゴミが海底にどう影響し、変化していくのかを継続して観察するために、18年経った今でも毎年スクーバで潜り続けています。

▲18年も一緒に潜り続けているマルキユー研究室長の藤原亮さん(左)は安心できるバディ 現地のガイドは3回変わり2023年からはダイビングショップスナッパーの野田博之さん(右)に

 コロナ禍の2020年、2021年の2年間のみやむをえず休止しましたが、2022年から再開、その分析結果を見ても何ら環境に負荷を与えている要素はありませんでした。釣り人も増え続けている今、水質にも何ら変化はありませんし、海底にも釣り人の影響と思われるようなエサの堆積は一切確認されていません。唯一気になるのは港湾工事による泥の堆積ぐらいです。
 調査中の面白い実験結果をお知らせしましょう。実際に釣りをしている場所にも潜り観察すると、マキエが海底に到達する前に小魚に全部食べられてしまいました。
 ハリに刺したエサも「エサ取り」と呼ばれる小魚が巧みにハリからエサをかじり取る様子は納得せざるを得ませんでした。
 水面からダンゴ状にしたマキエを落とすと、中層にいる魚もバラケながら沈んで行くダンゴをつつきながら追いかけてきます。
 さらにはそのダンゴを水面からの沈下途中で食べられないように、エントリー時に密閉処理して持って入り、海底の定点に設置して、それがどうなるのかも見てきました。
 この実験はいったんダイバーが魚を追い払うわけですから魚はいきなりワッと寄ってきてバクバク食べません。時間を追うごとに徐々に魚が活性化し、全て食べられるわけです。
 驚いたことに、そんなに魚がいても、磯あるいは防波堤からの釣り人に話を聞くと「釣れなかった」ということも多々ありました。
 「あんなにいたんだから」と調査後、私たちもその場所で釣りをしてみましたが、釣れないこともありました。ですから「釣れない」イコール「魚がいない」というわけではないんです。
 実際に海に潜り、釣り場近くの海底がどの様になっているのか、潜らないと見えない部分、わからない部分を見続けます。やめてしまうとその後どうなっているのかが見えなくなり、新鮮な情報とはならないからです。

▲調査は堤防周りという地味な場所への潜水ばかり しかし時に磯釣り対象魚がたくさん現れて興奮させられます

太公望の実績から考える


 約3000年前の中国で皇帝・文王が釣り人だった太公望の教えを仰いだということからも釣りが持つ哲学的な力が伺えます。
 釣りをしていた呂尚という男に文王が聞きました。
「何か釣れますかな?」
 太公望は答えました。
「釣れますとも、○○が」
 この○○が何であるか?わかりますか。みなさんも考えてみてください。「釣りは人生そのもの」という理屈がわかります。
 その答えと話を聞いて、文王は呂尚を軍師として迎えました。文王の祖父、太公が望んだ男として呂尚は太公望と呼ばれるようになったのです。(諸説あり)
 現代では釣り人のことを太公望という間違った風潮もありますが、釣るためにはどうしたらいいのか、戦略を練って実行できる釣り人のみが太公望と呼ばれるべきでしょう。

野釣りのすすめ


 管釣りと呼ばれる釣り堀などの釣り施設で釣りをすることが当たり前になってしまった今日、そうでない釣り場で釣ることをあえて野釣りと呼ばなくてはなりません。
 昨今の野釣り事情からは「魚が減った」「釣れない」という話も聞きますが、果たしてそうでしょうか?私はそうは考えていません。
 昨年は関東周辺の淡水域で野釣りを度々行いましたが、日本の淡水域もまだまだ捨てたもんじゃないと思うほど刺激的な釣りもできました。しかも釣り場はガラガラです。
 魚を求めて釣り堀に行く人と、自然を求めて野釣りに行く人の嗜好性がもともと違うと言ってしまえばそれまでです。「誰でも簡単に安全に」という理由で釣り堀の釣り入門教室などをするのは楽かもしれません。しかし自然の中で遊ぶのだからこんな準備や装備が必要だと教えてあげる方が釣りの持つ「夢やロマン」が広がっていくのではないかと近年は思っています。
 それはまた釣れない時間に「いるのに釣れない」ではなく、「いつ来るのか」「そのためにはどうしたらいいのか」を考えることにもつながります。信じて待つということも釣りです。そしてその結果釣れなくても釣りなのです。
 「釣り人は決して退屈していない。いつ来るのか?という緊張感を何時間も持続するのである」とは文豪・開高健氏の言葉です。
 そうして掛かった野生魚との戦いこそ、思い出に残る一戦となる事でしょう。

教え手が得る事でいい釣りを存続させる


 魚がいなければ釣りは成立しません。冒頭のとおり、釣りは自然に影響を少なからず与えますから、みんなが「釣りが自然に対してローインパクトであるべき」と言う前提と「リリースないし、キープする魚についても魚という動物を尊敬し、倫理的に取り扱うのは人間として当然の責任である」という考え方を持ち、それに沿った行動をしてほしいと思います。
 簡単に言うと、いい釣り場をたくさん残していきたいということです。
 2023年の夏は観測の記録更新をするほど各地は激暑。釣りに行かなくても熱中症にならないように努力するのが大変でした。突発的な線状降水帯も発生し各地で甚大な被害をもたらしました。

▲休日なのに人が少なくガラガラの霞ヶ浦でビッグヒット 筆者は大物に備え、磯竿にリール付きでへら鮒釣りをしています

 当然海や川の中の生態も変わります。私たちはその環境に対応できるでしょうか?
 そこでベテランの皆さんに提案です。皆さんがこんなに面白いと思って続けている釣りを多くの人に楽しんでもらうために、その喜びを伝えるということにも力を注いではいかがでしょうか?友人を誘う、家族を連れて行くなど方法は多様です。
 与えられるより与えよ、という人生の格言があります。
 「俺が釣る」という独占欲よりも「みんなで釣ろう」という教える喜びを味わう人が増えれば、自分も他人もともに楽しいという、自他共楽の精神が芽生えます。場所を独り占めすることなく、皆で釣りが楽しめる環境になっていきます。
 コロナ禍の影響で海も川も多くの釣り人であふれました。多くの方々が釣りを始め、また以前やっていてこれをきっかけに釣りに復帰した方々、そしてその家族も多いようです。
 さらに積極的に環境に優しい啓蒙活動を行うべきです。散らかしっぱなしのバーベキュー客を想像してください。そういう方々も釣りに来ているのです。にわかに増えた釣り人へも情報共有し、知らなければ教えてあげるという寛容な気持ちを持ち、環境を考えることを浸透させてください。いい釣りをいつまでも。
 太公望はその努力で文王の信頼を釣り上げました。現代の太公望が増えることにより、釣りという趣味の社会的地位も上がっていくはずです。

▲ハクレン(Silver Carp)も中国4大家魚のひとつで野釣りの魅力 坂東太郎(利根川)にて102cm「へらスイミー」と「いもグルテン」のブレンドで 大河での引きはとっても痺れます
▲中国4大家魚のひとつソウギョ(Grass Carp)はマルキユー本社の裏を流れる元荒川で 猛暑の中、夕方釣行で124cmという自己記録を

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